『就職面接』

「失礼します。」
声をかけて様子を伺う。
事務所の中は明るく、玄関には大きめの観葉植物、玄関から見える場所には白っぽいテーブルのセットが3つとソファが置いてあった。
すると、応接セットのパーテーションの向こうから、すぐに若くて綺麗な女性が出てこられた。

黒のフレアスカートに白いブラウス。
「○○さんですね?お待ちしておりました。」
ん?
こんな綺麗な事務員さんがいるなら、なにを募集していたんだろう?
白い丸テーブルに案内され、4脚の白い椅子の一番玄関側のイスをひいて座った。

今までは、会議室のようなところで、1〜2名の社員さん相手に面接していたので、何となく落ち着かない雰囲気。
おまけに、コーヒーまで出てきた。
綺麗な事務員さんは、パーテーションの向こうにある自分の机に戻ると、パソコンに向かって仕事の続きを始めたようだ。

コーヒーにも手がつけられないまま、しばらく待っていると、50歳前後の一人の男性が奥の部屋から出てきた。
渡された名刺には、代表取締役とあった。
ただ、名前の下にはいくつかの社名が書かれている。
お話を聞いてみると、経営しているのはここ以外にもエステサロンにブティック、人員派遣事務所、調査会社まであった。
それぞれに信頼できる社員さんをおいて経営を任せているというが、この結婚相談所だけは任せられる人がまだいないという。
また、他のところにはそれなりに顧客もついていて経営も回っているのだが、この事務所単独での経営は実際に難しいそうだ。

もともと、知人からなかなか結婚しようとしない息子さんのお世話を頼まれ、この会社を思いつき立ち上げたという、なんとも人が良いというか大胆な社長にわたしは興味がわいてしまった。

仕事として考えると、いつまで続くかも保障もあまり期待できそうにないが、景気が回復すれば、そのうち就職口も増えるだろうからせめてそれまでは、と気楽に考え、こんなわたしに是非と言ってくださる社長の気持ちに答え、翌週から働くことを決めたわたしだった。




















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