『初仕事』

早くもこの結婚相談所に勤務してから1週間がたった。
ファイル管理や、ちょっとしたデータの作成は、ほどんど美人な事務員さんがこなしてくれていたので、実際のお仕事はほんとうになくて、申し訳ない毎日だった。
なのでわたしは、社長が経営する別の仕事のチラシ折りやDMAの送付、人手が足りない時は事務所まで行って、電話番をすることもしばしばだった。
けっこう女性の登録者は、社長の知人を介して、なんとなくすすめられて、付き合いなのか何なのか、一応登録だけ・・・といった方も少なくはないようだ。
まぁ、実際にも、結婚しない女性が増えているのも現実だし、結婚したい男性のほうが世の中圧倒的に多いんだな、と実感したころ・・・
わたしは結婚相談所に勤務して、初めてお客さんと遭遇、いや、お顔を拝見した。
その日は朝から事務所の雰囲気が違っていた。
社長の知人から紹介された方が、事務所に来られるという。
そろそろ気の緩みはじめたわたしは、アイメイクにもさほど力を入れず、出勤早々お客様のご来店を知らされ、メイク道具すら持ってきていないことを後悔していた。
そんなわたしの様子に気づいた社長が言ってくれた。
「ご来店されるお客様がリラックスして話せるように、結婚経験のあるあなたを採用したんです。相手が若い女性だと緊張してしまうでしょう。」
それって・・・
あまりなぐさめになっていませんが(笑)
それで、わたしも気が楽になったのも事実ですが。
そのお客さまは、約束の時間通りぴったりに来られた。
社長からは30代と聞いていたので、かなり若い方(この相談所の登録者の中では)が来られると思っていたのだが、その方は背はわりと高いがメガネをかけていて、少し体格が良く(というかふっくらされている)、髪もあまりセットされた様子はないので実年齢より見た目は上に見えてしまった。
わたしの結婚相談所での初仕事は、この方の顧客ファイルをつくることだった。





















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